書籍紹介

お金を支配してより良い人生を送る方法

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 お金にコントロールされる人生からお金をコントロールする人生へ。私はこの本を読んだとき、このようなフレーズが頭に浮かびました。「193の心理研究で分かったお金に支配されない13の真実」を読んで、これまでお金に対する間違った思い込みが如何に多かったか思い知らされました。この本は、多くの日本人が持っているお金に対する思い込み(バイアス)から解放され、お金をコントロールすることでより良い人生を送ることができるヒントがたくさん詰まった本です。

人はなぜうまくお金を扱えないのか?

 人はお金を与えられたときの脳の反応として、ドーパミンが放出され、快楽を得て、お金そのものを欲し、やがてお金に支配されていくそうです。確かにお金は手段であるはずがいつの間にか目的化しているのも頷けます。この強力なメカニズムに対抗するにはどうすればいいか?やはり、バイアスや脳の働きを知ることで、少しでもこのようなメカニズムに対抗し、うまくお金を使えるようになるしかないかなと思います。

 実は人の心はお金の「形状」にも影響されるそうです。例えば、現金、小切手、クーポン券・・・etcどれも同じ1000円の価値だとしても、それぞれ価値を別に捉えています。クレジットカードに至っては買う決心をしやすくなり、いくら払ったか覚えていないということも。。。確かに、身に覚えがあります。

バイアス

 バイアスとは思考の偏りのことで、人はいろいろなバイアスに支配されているそうです。お金に関するバイアスとしていくつか紹介されています。

 例えば、人には相対思考というバイアスがあり、例えば同じ1000円の得になるのに、それが自転車のレンタル代(例えば2000円/時間が1000円/時間)だとうれしいし、自動車の価格(例えば200万の車が199万9000円)だとどうでもよくなる。同じ価値なのに、支払う価格の何%かが大事に思うそう。確かに、その通りですね

 損失回避はそのままの意味で、人は損をしたくないという気持ちが強く、得をしたい気持ち以上に働き、お金に関する決断に影響しているそうです。この気持ちに振り回されて、不合理な決断をいろいろとしているそうです。私の実感としてはこのバイアスがとても大きいと思っています。これは私の私見も入っているのですが、この後紹介する後悔プレミアム、授かり効果、妥協効果は損失回避が大きくかかわっているのではないか?と思っています。

 後悔プレイミアムは判断を誤ったと思いたくなくて合理的な判断ができないこと。例えば起こる確率がほぼないのに保険に入るとか、買わなかったときに悔しい思いをしたくないという気持ちから同じ番号の宝くじを買い続けるとか。確かに私もこれやったことがありますね・・・

 授かり効果は人は自分のものを高く見積もる傾向があり、思い入れが大きくないものでも少しの得だと手放さないといった合理的な判断ができないとうこと。例えば、この本の中で紹介されていた実験ではコーヒーカップを見てもらい、売り手と買い手に分かれます。売り手が売ってもいいと思う値段と買い手が買ってもいいと思う値段を提示してくださいと言われたら、買い手は平均で2.5ドル、買い手はその倍の5ドルを提示したそうです。売り手も買い手も強気になっただけと思うかもしれませんが、売り手はその後の交渉でも譲らず提示額は5ドル弱。買い手の見積金額から高すぎる要求をしたそうです。さらに面白いのは、実験では、そのコーヒーカップはその日の朝に見ただけで、まったく思い入れもないのにそのような行動をとったそう。損失回避が働き、物の価値を正しく見積もれないのだというそうです。

 価格効果は同じものでも高い方が効果があると思うバイアスで、例えば、中身が同じエナジードリンクでも値段が高い方が効いたと思う人が多いんだそうです。でも、気のせいではなくて、このテストでは、実際にアナグラムテストを行うと、同じエナジードリンクなのに価格が高い方が成績がいいことが分かったそうです。頭痛薬もジェネリックよりジェネリックじゃない方が効く時間が速いと回答しているそうです。化粧品とかも高い方が効いたと思っていいのかもしれませんね。思い込みで体まで良くなっちゃうっててこと??これもプラシーボ高価なのかなぁ?

 妥協効果は高価なハイスペックPCと中間価格のミドルスペックPCと安価なロースペックPCがあったとき、ミドルスペックPCを選ぶ人が多い。損失回避のバイアスがかかり、品質的に見どころはないが、失敗もしないものを選びたがるそうです。

 アンカリングは強力なバイアスです。これは最初の提案価格に引きずられるというバイアスで、かなり強力な効果があるそうです。例えばガンジーが死んだのは140歳より上か?という質問では、亡くなった年齢を答えた平均は67歳、ガンジーが死んだのは4歳より上か?という質問では平均で50歳だったそうです。知らず知らずのうちに質問の数字に影響されているのがわかります。これを回避するにはやはりアンカーを下す側に回るのが一番だそうです。ということは、値引き交渉ではこちらから値引き額を提案した方が有利に進められるということですね~。今度からこうやってみよっと。

お金をうまく貯める心の持ち方は?

 あるタイプの人がある貯蓄プランで成功したからといって、別のタイプの人もうまくいくとは限らないそうです。また、未来志向型の人は貯蓄性向が高いそうです。まぁ言われてみればそうですよね。未来志向型の人は将来に備えるでしょうしね。また、人は今まで貯金できなかったのに、これからは貯金できると思う傾向があるとのこと。これは将来についての考え方が抽象的になるからとのことです。人生は直線的ではなく、循環型で考えるとうまくいくそう。なぜ前回はうまく貯金ができなかったかをしっかりと考えて対策を立てる必要があるということですね。例えば、貯金をつい使ってしまう人とかは、引き出せない定期貯金や給料引き落としで貯蓄するのもいいかもしれませんね。ちなみに私は手を付けていい枠を作ることと、手を付ける時は理由を書いておくことでだんだんと失敗がなくなってきました。

お金をうまく使うには?

 これは他の書籍等でもよく言われていますが、やはり買うなら経験です。経験は一瞬、物は長持ちと思われる方も少なくないかもしれませんが、新しいものを買ってもすぐに慣れてしまうことってないですか?あとからこれ本当に必要だった?って思うことはありませんか?私はいままでたくさんありました。ひどいと買ったことで満足してあんまり使わなくなったりといったことも・・・一方で親しい友人や家族といった旅行は今でも心に残っていて、たまにその話で盛り上がったりもします。やはり、人生をよりよくするには経験にお金を使うことがいいんだと思います。あと、他人のためにお金を使うことも脳の報酬系が活性化し、幸せな気持ちになれる行為だそうです。確かに自分の経験から、少額でも寄付をするとなんだか誇らしい気持ちになりますね。

 また、支払いは前払いがいいとも書いています。理由としては支払いの痛みを所有や活動の喜びから切り離されるからだそうです。実際に支払いの痛みは本当の痛みとして脳は認識するそうです。ただ私個人の実感では、初めはそうでも、慣れてうまく使いこなせるようになるんじゃないかなぁって思っています。というのも、私は現金をあまり持ち歩かず支払いはほぼクレジットカードにしているのですが、当初は使いすぎたりしていましたが、1-2年ほど使っているとだいぶコントロールできるようになってきました。当初考えてなかったメリットもあって、クレジットカードや電子マネーは何に支払ったかの記録もしっかりと残るので、現金を主体にしていた時よりも使途不明金が少なくなりました。なので、後払いも使いようかなとも思います。デビットカードならもっといいのかなぁ?

 お金には力があることは確かです。心でお金を操ることができれば、自分の生活をよりよくでき、さらに他人の生活もよりよくできる。ただし、お金には人を別のものに変える力はありません。充実した人生を送るにはバイアスに振り回されず、お金の扱い方をわきまえて、お金で解決できない問題もあることも理解する。「お金には力がある。だがそれを操るのは人でなければならない」とこの本では結論付けています。私も、このようにお金を扱えるよう日々気を付けていきたいと思います。

 今回紹介しませんでしたが、ほかにも「お金はインセンティブニなりえるのか?」とか「お金はいくらあっても困らないのか?」とか「お金のダークサイド」といったかなり興味深いことも書かれていますので、興味をひかれた方は、ぜひ本書を読まれてみてはいかがでしょう?  著者のクラウディア・ハモンドさんは作家であり、キャスターであり、心理学者の方だそうです。すごい多彩な人ですね。この本の中のエピソードで、自分の誕生日プレゼントを買いに行った夫が、誕生日プレゼントではなく夫のジャケットを買って帰ってきたことをかなりいじっており、結構怒ってたんじゃないかなって思って、面白く読ませていただきました。お金をうまく使う力をつけるための知識が得られるとてもいい本でした。