書籍紹介

部下の育成やチームビルディングに悩む管理職必読!!「THINK AGAIN」について解説①

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

日々部下の育成、チームの方向性、判断を求められることに疲れた管理職の皆さんこんにちは!私も管理職の端くれとして、同じような悩みを抱え、日々悪戦苦闘しています。今回はそんな悩みを解決する手助けになる本を紹介したいと思います。その本は「THINK AGAIN」(アダム・グラント著)です。この本は「考え直すこと」の大切さを教えてくれます。

では、考え直すこと(再考すること)が何故いいのか?それは以下のメリットがあると私は考えます

  • 思考が柔軟になる
  • 思い込みを手放せる
  • 学び続けられる
  • 発想を豊かにできる
  • チームメンバーとのディスカッションの質を上げられる
  • 学び続けられる組織を作ることができる

これらメリットにより、仕事だけでなく、人生の選択でも適正な判断を下すことができたり、強い組織を構築したりすることができたりするのではないかと考えています。

この本は以下のような人にオススメです。

  • 部下の育成、組織運営、日々判断を求められる管理職の人
  • クリエイティビティ(創造力)を鍛えたい人
  • 自分のキャリアパスに悩んでいる人

それでは、さっそく解説していきましょう。

自分の考えを再考する方法

再考する習慣を身に着けよう

私達は考えたり、話たりする時、無意識に3つの職業の思考モードになります。

  • 牧師:信念がぐらついたとき出てくる思考モード。理想を守り確固としたものにするために説教する。私は自分の見解の正しさを述べて、説得するモードだと理解しています。
  • 検察官:他者の推論に矛盾を感じた時になる。相手の間違いを明らかにするために論拠を述べる。これは、相手の矛盾を突きまくるモードですよね。管理職の皆さん部下にやりがちじゃないですか?
  • 政治家:多くの人を味方につけたい時になる。支持層の是認を獲得するためにキャンペーンやロビー活動を行う。これは、自分の味方を増やそうとして、みんなに働きかけるモードですね。

どうでしょう?皆さんはこのような思考モードに見に覚えはありませんか?私はめちゃくちゃあります。これらの思考モードには潜在的な危険性があります。それは

  • 自分の信念(意見、考え方、見解)を貫くこと
  • 他者の過ちを指摘すること
  • 多くの支持層を獲得すること

これらに没頭するあまり、自分の考えが間違っているかもしれないと思い至ることができなくなってしまいます。そして、私達は下図のような「過信サイクル」にハマっていってしまいます。

出典:「Think Again 」アダム・グラント著

過信サイクルは、

  1. 自分の考えが正しいと思い込み(正しさを証明したくて)、まだ知識が足りていないのに気づかない状態になります。
  2. その結果、プライド(自尊心)が高まってしまいます。
  3. 自尊心の高さで、自分の考えが正しいという確信を産み、間違っているかも?といいう疑いを消し去ってしまいます
  4. そして、その確信が人を検察官にして、相手の見解を変えることに全力を注ぎ、自分の見解は決して変えません
  5. さらに、「確証バイアス」と「望ましさバイアス」が入り込み、周囲の人から賛同を得られない考えを無視したり、はねつけたりしてしまいます。
  6. で、自分の考えの正しさを周りに認めてもらおうと働きかけるようになってしまいます。

こうなってくると、自分の見解が正しければいいんですが、そうでない場合は判断を間違えることになってしまいます。また、より良い考えも出てきません。ちなみに、確証バイアスと望ましさバイアスとは、

  • 確証バイアス:自分が予期するものを見ること。例えば、自分の説の正しさを証明するデータだけを探しちゃったりすること
  • 望ましさバイアス:私は自分自身をよく見せようとして、内容を誇張したり、自分自身が不利になるようなことを言わなかったりすることと理解しています

では、どうすれば再考できるようになるのか?それは「科学者のように考える」ことです。仮説、実験、結果、検証と科学者のように考えて、説教も不正探しも政治活動も行わないことが大切です。

また科学者のように考えるということは、単に偏見のない心で物事に対応することではなく、能動的に偏見を持たないことということです。つまり、なぜ自分の見解が「間違っているかもしれない」のか、その理由を探し、分かったことに基づいて見解を改めるということが大切です。ちなみに、なぜ自分の見解が正しいのか?と考えることはNGです。こうなると、確証バイアスと望ましさバイアスの出番になっちゃいます。

そうすると下図のような再考サイクルに入っていくことができます。

出典:「Think Again 」アダム・グラント著

再考サイクルは、

  1. まずは知的に謙虚であること
  2. 考え方や意見について、盲目的に信じることはせず、論理的かつ公平な視点で物事を検討するために疑問を投げかける「健全な猜疑心」が必要です。ここでいう健全な猜疑心は、他者の考えや意見にだけ向けられるものではなく、自分自身の考えや意見にも異議を唱えられるようにしなくてはなりません
  3. そして、好奇心をもってそれを検証するために実験を行い
  4. 新しい知識を発見する

というループに入ることができます。

では、どうすれば科学者の思考モードで居続けられるのか?本書でも紹介されていたノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンはこう言っています。「自分の信念をアイデンティティから切り離すことがカギ」。ここでいう信念とは意見とか考え方とか見解といった意味で捉えたほうがわかりやすかと思います。

そうは言っても、自分の意見を変えるのは勇気がいるし、なんだか自分が否定されたような気分になってしまう人もいるかと思います。じゃあ、どうやって自分の意見とアイデンティティを切り離すのか?という問いに、アダム・グラントさんは2つのデタッチメントが有効だと言っています

  1. 過去の自分と現在の自分を分離させること
  2. 自分の信念ではなく、価値観に基づいて自分を定義する

1つめの過去の自分と現在の自分を分離させるということは、理想的には過去の自分が別人のように思えるというのがいいんだと思いますが、この域までなかなか達するのは難しいのかなと個人的には考えています。なので、私は「新たに分かったことがあるんだから、意見変えたっていいじゃーん」って思うようにしています。そうすると、過去の自分の考え方や意見に引っ張られれて判断を誤ることが少ないと感じています。

2つめの自分の信念ではなく、価値観に基づいて自分を定義するですが、信念っていうと貫くことが美徳みたいな世界があると思うんですが、ここでは意見・考え方・見解といったライトな感じのほうがしっくりくるかなぁと思います。最近は自分の意見を否定されると、まるで自分自身を否定されたように感じてしまう人が多くなったと思います。私もそうなるときがあります。ただ、自分の価値観(例えば、自由であること、公正であることとか誠実であることなどなど)に従って、自分を定義すれば、意見や考え方を改めるのにあまり嫌な感じはしないですよね。これができると、柔軟な考え方を持つことできて、視野を広げることもできるし、新しい意見を取り入れて、自分のやり方をアップデートしたりする柔軟性もでてきたりします。この方法は、目からウロコですよね。

自信過剰には気をつけよう

人はど素人からワンステップ進んでマチュアになった時、自信過剰に陥りやすいそうです。ちなみに、このような状態を「マウント・スチューピッド」(自信過剰、優越の錯覚)というそうです。例えば、サッカー日本代表の試合で、監督に文句を言っている人や、野球中継を見ながら、うんちく語っている人ですよね(でも、ビール飲みながら、試合を見て、文句言ってるのって楽しんですよね〜)。ではなぜ、こうなってしまいやすいのか?ある研究によると、心の知能指数テストでの獲得スコアが低い人ほど、自己を過大評価してしまうそうです。また、もう一つの要因としては、メタ認知不足が挙げられます。メタ認知とは、自分の思考や行動を客観的に捉える能力のことです。つまり、自分の能力をメタ認知できないために、自分の不適格正を正しく認識する事ができないということです。

また、ダニング=クルーガーの研究で、論理的推論、文法、ユーモアセンスのテストでスコアが低い人ほど、自己の能力を過大評価したという研究もあるそうです。人は、ある特定の分野における能力が低ければ低いほど、同分野での自己能力を過大評価する傾向にあるということですね。

ここまでで、私は大丈夫と思った方もいるのではないでしょうか?でも、誰にだってマウント・スチューピッドに陥る可能性はあります。だって、誰もがほとんどのことにおいて素人だからです。さらに、特に人は自分が望ましいと思う能力(例えば、相手を魅了する会話術とか)においても、自己を過大評価する傾向にあるということとです。気をつけたいですね。

では、どうやって、自信過剰の状態に気づけばいいのか?心理学者によると、私達の多くが「説明深度」(自分が説明できる知識の深さ)を錯覚しがちだそうです。このような錯覚に気づく、もしくは相手気づかせるには、そのもののメカニズムについて説明する(もしくはしてもらう)ことが効果的だそうです。確かに、上から目線で色々と語ってくる人に、なぜそうするといいんですか?とか聞くと、もじもじしてますね〜。自分自身の自信過剰チェックをする際には、メカニズムについて説明することを心がけるといいですね。

では、最適な自信のレベルってあるんだろうか?という疑問が出てくるかと思います。本書はここについても言及しており、それによると、下記だそうです。

将来の目標に達するのに充分な能力が備わっていると自信を持ちながら、そのための正しい手段は何かと現在の自分に問う謙虚さを持つ

自分のやり方を疑っていても、自分には学ぶ力があると確信することが大事になります。また、謙虚さとは自身を控えめに持つことではなく、しっかりした知識や能力、つまり自分の過ちや不確実さを認識する能力のことです。自信は自己信頼度のことであり、自分のやり方をどれほど確信しているかの度合いではありません。このためには前でいった「自分を価値観で定義する」ということが大切になってきますね。自分自身が目標にたどり着く能力はあるが、その方法は色々とあるはずだ。もっといい方法はないか?と問い続けるということが大事ということだと思います。このような「自信に満ちた謙虚さ」はスキルであり、習得することが可能であると本書は言っています。確かに、知らないっていうのは能力がないっていうことではないですもんね。自分の実感ですが、このあたりを勘違いしている人が多いように感じます。「こんなことも知らないの?」とか言う人っていまだに居ますもんね。私達は知らないことのほうが多いと思っています。知識は専門家から教えてもらえばいいだけで、それを使ってどうするか、他にもっといい方法がいいか探すことが一番の課題ですからね。

あなたの考えを他者に評価してもらおう

知り合ったすべての人から新しいことを学ぶことが大事です。特に「応援ネットワーク」だけでなく、「挑戦的なネットワーク」も作ることが大切です。「応援ネットワーク」とは文字通り、あなたを応援してくれる人たちです。協調的な人が多く、このような人たちは周囲を励まし、熱心に応援します。一方で、「挑戦的ネットワーク」は私達に再考を促してくれる人たちです。盲点を指摘してくれ、弱みを克服する手助けをしてくれる、信頼のおける人たちの集団です。このネットワークの理想的なメンバーは「非協調的なギバー」です。私達は、自分に同調してくれる人よりも、自分の見解に意見してくれる人からより多くを学びます。そして、非協調的なギバーを選ぶことで、最も有益な批評をしてくれることが期待できます。私の身の回りには、少ないけれども、こういった人がいますね。これからはもっと意見を求めるようにしてみます。ちなみにギバーがわからない人は、同じくアダム・グラントさんの「GIVE&TAKE」を読んでみてください。この本もかなりいい本で、とてもおもしろいですよ。簡単に言うと、世の中には「ギバー」「テイカー」「マッチャー」がいて、ギバーは与える人、テイカーは奪う人、マッチャーはそのバランスを取る人で、最も損をするのはギバーで最も得をするのもギバーだったということが書かれています。

そして、「建設的な対立」を恐れないことが重要です。オーストラリアの心理学者カレン・ジェーンさんによると対立には2種類あるそうです。

  1. リレーションシップ・コンフリクト(人間関係で起こる対立)
  2. タスク・コンフリクト

1.リレーションシップ・コンフリクト:敵意や憎悪のぶつかり合いで、生産性の低いチームはタスク・コンフリクトよりもリレーションシップ・コンフリクトが多いそうです。リレーションシップ・コンフリクトが生産性を損ねる原因の一つは、対立が再考の妨げになるからです。衝突が個人的なものや感情的なものになると、自分の見解は独りよがりの牧師に、他者の見解に対しては悪意に満ちた検察官になるからだそうです。

2.タスク・コンフリクト:異なる意見がぶつかり合う理想的な対立。生産性が高いチームはリレーションシップ・コンフリクトが少なく、タスク・コンフリクトが多かったそうです。また、対立が起こらないほうがいいという方もいるかも知れませんが、対立が起こらないということは、それは協調性が高いということではなく、無関心によるものであることが多いそうです。タスク・コンフリクトが建設的であり得るのは、思考や意見の多様性がもたらされ、メンバーが過信サイクルに陥るのを引き止めてくれるからではないかと思います。

本書にも書かれており、私もそう思うのですが、タスク・コンフリクトの最大の問題はタスク・コンフリクトであったはずが、お互い熱くなっていき、いつしかリレーションシップ・コンフリクトに姿を変えてしまうということではないでしょうか?これを防ぐのはなかなか難しい。自分自身の経験でいうと、二人で議論している場合は、議論している人のモラルにかかっていて、コントロールすることはなかなか難しいかと思います。二人の関係性にも依存しますし、どうすればいいんでしょうか?このあたりは、次回以降のテーマで語りたいと思います。また、複数人で議論する場合、弱い立場の人(若手や経験が浅い人)は反対意見を持っていても、同調するために口をつぐんでしまうことが多いかなと思います。このような場合は、立場のある人が雰囲気を柔らかくするしか方法がないかと思います。また、議論しているどちらかが、必ず答えはあるということを言ってもいいかもしれません。つまり、色んな人が議論に参加できる雰囲気を作らないと、タスク・コンフリクトはいつしかリレーションシップ・コンフリクトに変わってしまう気がします。口げんかではなく、討論ができた時、とても実のある結論が得られると思います。

まとめ①

さて、ここまでは自分の考えを再考する方法について解説してきました。全部やると分量がかなり多くなってしまうので、この先は分けてやりたいと思います。自分の考えを再考する方法をまとめると

  1. 科学者の思考モードで考えよう
  2. 意見、見解、考え方ではなく、価値観で自分を定義しよう
  3. 自信過剰に注意しよう
  4. 自信に満ちた謙虚さを手に入れよう
  5. 「挑戦的ネットワーク」を作ろう
  6. 建設的な対立を恐れないようにしよう

では、以降で「相手に再考を促す方法」や「学び再考し続ける組織を作る方法」について解説していきたいと思います。