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部下の育成やチームビルディングに悩む管理職必読!!「THINK AGAIN」について解説②

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みなさんこんにちは。前回に引き続きアダム・グラントさんの「THINK AGAIN」の解説をやっていきたいと思います。今回は「相手に再考を促す方法」について、解説します。前回の記事を読んでいない方は、こちらから読んでいただけると、より理解が深まるかと思います。

また、原書を読むよ〜という方には以下のリンクを貼っておきます。

傾聴の力

他人の考えを変えたい時、ほとんどの人は積極的に自分から意見を述べますよね?私もしばしばそのパターンにはまってしまいます。でも、果たしてそのようなアプローチで相手の考えは変わったでしょうか?私の経験上、それは難しいなぁって思っています。「他人と過去は変えられない」という言葉が示すように、他人の考えや行動を変えたいと思っても、なかなか難しいですよね。私たちは、相手のためにと思い、アドバイスをしたり、自分の見解を伝えたり、誤りを指摘することが多く、このような姿勢はまるで前回話した牧師、検察官、政治家のようです。アダム・グラント氏は、このアプローチが必ずしも効果的でないと指摘しています。彼は相手の意見を変えるうえで非常に効果的なのは、「ただ静かに話を聞く」ことだと言います。この方法だと、相手はリラックスし、心の中の本当の考えを率直に話すことができます。要するに、相手の心に届くためには、「傾聴」が重要だってことですね。

アダム・グラントさんによると、傾聴とは質問するスキルと応答するスキルが一体となった能力のことだそうです。繕ったり、補ったり、勧誘したり、説得したり、修正したりといった意図を持たず、純粋な好奇心に満ちた質問を投げかけることが大切だと言っています。純粋な好奇心に満ちた質問っていうのは、前提や判断を持たず、相手の意見や考え、経験を深く理解しようとする質問のことです。このような質問は、相手の視点や感情を探求するためのものです。

以下は、純粋な好奇心に基づいて投げかけられる質問の例です:

  1. それについてもっと詳しく教えてもらえますか?
  2. あなたがそう感じるようになった背景や経験は何ですか?
  3. その考えに至った理由や動機は何ですか?
  4. その時、どんな気持ちでしたか?
  5. あなたが望む理想的な結果や状況は何ですか?
  6. それについてどのように学びましたか?
  7. その経験や出来事があなたにどんな影響をもたらしましたか?
  8. 他にも似たような経験や考えを持ったことはありますか?
  9. どのようにしてその考えや感情に気付いたのですか?
  10. それを聞いて、私にどのような感想や意見が浮かぶと思いますか?

これらの質問の例は、ちょっと硬い日本語になってますので、うまくアレンジして使ってくださいね。

多くの人は、話す際に自分を賢く見せたいと考えるものです。しかし、傾聴スキルが高い人は、自分よりも対話の相手を賢く見せることが重要だと考えます。彼らは相手が深く考えを掘り下げる手助けをする姿勢を持っています。

また、ある調査結果によれば、従業員から最も聞き手として評価されなかった経営者の94%は、自分を優れた聞き手だと考えているようです。自分もそのように認識がズレてしまわないよう、常に自己反省が必要ですね。

傾聴について、よく分かる本があるので、下記にリンク貼っておきます。傾聴に興味のある方に参考になると思いますので、ぜひご一読ください。

アダム・グラントさんはこう言います「聴く」ことの素晴らしさというのは、相手は誰にも干渉されることなく自分の見識について熟考する機会を得られます。思いやりや尊敬の念を相手に伝えることもできます。私の中で響いた言葉をつぎに示します。

手段は、私達の人格を測る物差し。誰かの心を変えることができた時、それを成功だと喜ぶだけではダメ。どのように成功を収めたのか、そしてその手段を誇りに思えるかと自問しなければならない

相手の意見はどのように形成されたのかを尋ねる

こう書くと、ん?どういうこと?ってなりません?私もなりました。

本書ではヤンキースファンvsレッドソックスファンを例に出して解説しています。この2つのファン同士はとてもいがみ合っているそうです。日本でいうと阪神ファンと巨人ファンみたいな感じでしょうか?サッカーだとダービーマッチ。このヤンキースファンとレッドソックスファンはかなり憎しみ合っているそうで、どうすれば対立をなくすことができるか?という実験を行っています。共通点を見出す方法であったり、他者への思いやりを強調してみたりと色々やってみても全然ダメで、対立をなくすことができなかったのですが、この時唯一効果があったのが、「敵意は理不尽であると気づかせる」だったそうです。

どういうことかと言うと、相手に違う場所に生まれていたらどうか?と問いかけると敵意は改善したそうです。生まれた場所が反対であれば、お互い相手のファンになっていたかもしれないということです。要はこれは理不尽な習慣であり、小さいときに植え付けられたものとか引っ越し先で友達を探すときに植え付けられたものということです。敵意は理不尽なものであるという気付きが変化をもたらしたそうです。

このように固定観念をもつ人に「反事実的思考」をしてもらうことで、固定観念を捨て去ってもらうことが大切。「反事実的思考」とは、別の世界を想定し、そこに住んでいたら何を信じるかを考えてもらうことです。例えば、もし黒人としてこの世に生まれていたら、あなたの固定観念は今と異なっていたと思いますか?とか聴いて見ると良いそうです。ひょっとして、異なる状況では異なる見方をしていたかもしれないと気づかせる事ができれば、相手の固定観念を変えるきっかけになるかもしれませんね。

意見の相違はダンスのようにアプローチする

またまた、ん?どういうこと?というフレーズが出てきたかと思います。著者のアダム・グラントさんはこう言っています。『よいディベートはいわばダンスだ』まだ振り付けのないダンスで、相手のステップを想像しながら自分の動きを調整する。あなたが強く引っ張りすぎると、相手は抵抗するだろう。あなたが相手の動きに合わせ、相手もあなたに同調すれば、双方がリズムに乗ることができる。と言っています。

一流の交渉にが使うテクニック

交渉では、相手の主張に同意することは、相手の敵意を和らげることに繋がります。では、一流の交渉人が使っているテクニックを紹介しましょう。

合意枠を事前に予想して書き記す

一流の交渉人は、相手との交渉をダンスステップのように捉え、様々な角度からそのステップを検討します。事前に相手との合意の範囲を予測し、それを明確に記録しておくなど、詳細な構図を前もって準備しています。また、その準備した構図に記された交渉ポイントの約1/3には、合意点を見つけるための戦略が書かれていると言われています。

「少ない」ほうが得るものが「多い」

一流の交渉人は、自分の主張の論拠をごく少数しか提示しません。その理由は、持論のベストポイントを薄めたくないからです。「弱い論拠」は、多くの場合、強い論拠の効果を薄めてしまいます。交渉のテーブルに出す論拠の数が多いほど、根拠薄弱なものを切り捨てるのはたやすくなります。そして一度こちらが正当とする証拠や事実を相手がはねつけてしまうと、相手はこちらが提示している全ての事実をいとも簡単に退けてしまいます。

攻撃や反撃に出ることは殆どない

一流の交渉人は、交渉相手に対して攻撃や反撃に出ることは殆どないそうです。その代わりに、交渉相手への関心を示し、「それでは、私の提案に利点がないと思っていらっしゃるのでしょうか?」というような質問を投げかけて、相手とディベートしていくそうです。

発言の1/5は質問

一流の交渉人は、5つの発言のうち少なくとも1つは相手への質問だそうです。この質問を通じて、まるでダンスを舞うように、相手を前に一歩進めるよう促していたのです。

このことからわかるのは、他者の考えを変えたい場合、自分の考えに固執していては交渉は前に進まないということです。最初からオープンな態度で接し、自分の主張に存在する問題点や、相手の主張の中で正当な部分を認めることで、より良い結果が期待できるでしょう。

選択の自由を強調する

相手に「自分で決める余地」を与えることはとても効果的です。複数の心理学実験によると、大抵の場合、あなたを最もうまく説得して考えを改めることができるのは、あなた自身だと言います。相手に「自分で決める余地」を与える方法について、一例を挙げると

  1. 質問をする:命令や指示を与える代わりに、質問を通して相手の考えや意見を引き出すよう努めます。例えば、「このプロジェクトについて、どう思いますか?」や「あなたならどう進めますか?」といった質問が挙げられます。
  2. 選択の幅を提供する:「AかBのどちらが良いか」など、具体的な選択肢を与えることで、相手が自らの判断を下せる状況を作り出します。
  3. 明確な目標を示す:結果や目標を明確に伝えることで、方法や手段に関しては相手に任せることができます。
  4. フィードバックを促す:相手の意見や提案に対して積極的にフィードバックを求めることで、相手が自分の意見や考えを表現しやすくなります。
  5. 情報を開示する:必要な情報や背景を共有し、透明性を保つことで、相手がより有意義な判断を下せるようになります。
  6. 傾聴する:相手が話している時は、しっかりと耳を傾け、その意見や考えを尊重することが大切です。
  7. 制約を最小限に:必要以上の制約やルールを設けず、相手の自由度を最大化するよう努めます。
  8. 信頼を示す:相手の判断や能力を信頼し、それを口頭や態度で示すことで、相手は自分の考えや意見を自由に表現しやすくなります。

といった方法があるかなと思います。大事なのは相手の意見を引き出して挙げるということが大事になってくるってことかなぁって解釈しています。

相手との意見の不一致が生じている時、まずやることは

  • 同意できる点を指摘し、相手の主張にも一理あることを認める。そうすることで、こちらは自信と謙虚さのバランスを取ることができ、相手も同様の態度をとるようになる
  • こちらの主張を支える理路整然とした説得力のあるごく少数の根拠を示す。そうすることで、相手はこちらの主張に耳を傾け、自分の見解を疑問視するようにもなる
  • そして、こちらからシンプルな問いを投げかける。相手は興味をそそられ、答えを探ろうとする

この3つをベースに交渉を進めます。こちらの正当性を相手に納得させる必要はありません。肝心なのは、相手の心を開かせること、自分が間違っているかもしれないという可能性について考えさせることです。相手の関心が高まれば、ダンスステップを合わせることができるようになるはずです。

ちなみに、時と場合によって、自説の美点を説いたり断固として主張することで説得力が増す場合があります。それは次の3つの度合いによって決まります

  1. 相手がテーマにどれほど関心をいだいているか
  2. 相手がこちらの主張に対してどれほど耳を傾けているか
  3. 相手がどれほど頑固であるか

相手がテーマにそれほど関心がなく、こちらの主張に耳を傾けてくれて、頑固でない場合が当てはまります。例えば、話しているテーマが相手との利害関係がない場合とか、仲のいい友達等で相手に私達の見解を受け入れる意思がある場合は、理由を多く提示したほうが有効です。というのも人は量と質は比例すると考える傾向があるからです。

でも、テーマが重要であればあるほど、理由の質が一層重要視されます。聴衆が私達の考えを疑問視する時、相手が問題と利害関係にある時、相手が頑固なときに、次々と理由を積み上げられるのは逆効果です。考え直すことを拒む人々に多くの理由を提示してはいけません。

まとめ

今回は相手に再考してもらう方法について紹介させていただきました。いかがだったでしょうか?今回の話をまとめると、相手に考えを改めてもらうには

  1. 聴くことを意識する
  2. もし生まれが違ったら意見を変えますか?と聴いてみる
  3. 一流の交渉人が使うテクニック、特に少ないしっかりした論拠を示す。
  4. 相手に自分が決める余地を残しておく

このようにアプローチしてみると、相手も再考してくれるかもしれません。これまで、私は交渉事はあまり得意じゃないと思っていましたが、今回学んだことを、私も相手との議論が平行線の時、使って見ようかなと思いました。皆さんの参考になっていれば嬉しいです。