書籍紹介

これまでの時間についての常識を覆してくれる「YOUR TIME」

Your time
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 最近、年をとったせいか一年がどんどん短く感じるようになってきました。 以前に「一年の感じ方は1/年齢」という話を聞いたこともありますが、それも本当なのですかもしれませんね。最近の私は、お金よりも自分の時間を大切に思うようになってきました。結構前ですが、ロルフ・ドベリさんの『ニュースダイエット』を読んでから、より一層自分の時間の大切さを意識するようになった気がします。この本もとても面白いので、興味がある方はぜひ一度読んでみてください。

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 でも、最近はなんだか自分の時間の使い方はどうなんだろうか?と思うことが増えてきて、そんなときに出会った本が『YOUR TIME』です。この本を読んでみた感想は、これまでの時間術というか時間の考え方についての概念がぶっ壊されましたね。「時間の効率化を考えていると、時間は永遠にうまく使えない」とか「退屈な時間って実は大切なんだ」とか・・・えー!!これまでのやり方っていったいなんだったんだ・・・って思いました。  これから『YOUR TIME』を読んで自分なりに考えたことや感想を書き記そう思います。この本は私の時間の価値観を変える良いきっかけとなりました。みなさんにとっても、より充実した人生を送るためのヒントを見つけることができるかもしれません。

時間感覚タイプテスト

 この本を読んでまず行うことは、『時間感覚タイプテスト』です。本のQRコードからサイトに飛んで、質問に答える形式で自分の時間感覚タイプを診断します。時間感覚タイプは『予期』と『想起』の2項目から成り立っており、それぞれ4タイプずつあります。

  • 予期:容量超過、浪費家、禁欲家、無気力
  • 想起:自信家、楽天家、怖がり、悲観主義

で、自分の時間感覚は『予期:〇〇型、想起:〇〇型』とそれぞれのタイプが分かるようになっています。この時点で、『予期』とか『想起』ってなんのこっちゃってなりましたが、これは本を読み進めていくと分かるようになっています。ちなみに、私は

『予期:浪費家』重要なタスクとそれ以外のタスクを見分けるのが苦手。とりあえず、簡単な作業ばかりに手を付けるタイプ。結果として長期プロジェクトが停滞しがちな傾向・・・・ぐぬぬ・・・その通りです・・・あまりに当たっていて心が辛い・・・もう一回やってみたら、やっぱり、予期は浪費家でした・・・・

『想起:自信家』難しい作業にも臆せず取り組めるタイプ。ただし、自分の能力を信じすぎ、必要な助けやリソースを得られず失敗することも。ここは何回かやってみたら怖がりも出てきたので、自信家と怖がりの微妙なところなのかな。と、自分の時間感覚がなんとなくわかった段階で、時間術の話を見ていきます。

時間術について

 この本の面白い所のひとつなんですが、いきなり『時間術と仕事のパフォーマンスは相関しない』って話から始まります。自分もなんとなくそんな気がしてたんで、やっぱり〜って思いました。

時間術に関する3つの真実

時間術を駆使しても仕事のパフォーマンスはさほど上がらない。コンコルディア大学が2021年に調査した研究では、時間術と仕事のパフォーマンスの相関係数は0.25だったらしいです。0.25って微妙なラインですよね。なくはないけどって程度かなぁ。自分の実感としては、例えば「To Doリスト」使ってその日の仕事のやることを書き出して、やったりもするんですが、いまいち効率的にならないんですよね。なにか急な仕事が入ったりして忙しくなると結局見なかったり、次の日に終わっていない残りのリストを見て、ストレスになったりと使い方が意外と難しい。また、邪魔が入らないように「ブロック」するタイプの時間術で、一人で会議室に入って、メールソフトを立ち下げて仕事をするといったことをやってみたら、これは効果がありましたね〜。やるべきことはサクサクと進みました。でも、デメリットとして承認業務が増えてくるとこれがあまり使えない。メール立ち上げたら、承認依頼が溜まっててげんなりするので、頻繁にこの「ブロック法」は使えないですね〜

時間の効率を気にするほど作業の効率は下がってしまう。時間の効率の追求が判断力を下げるそうです。つまり短時間にどれだけの作業をしたか?っていう判断軸になっちゃうってことかなと思います。こなした作業量が判断基準になるので、手軽な作業だけで満足しちゃうようになるそうです。自分の感覚としてもデスクトップの整理とかメールの返信とか、簡単でたくさんやると満足しちゃう傾向があるかなぁ。面倒くさくてどう手を付けたら良いか分からないものはついつい後回しになっちゃう傾向があるかも。例えば、仕事で役員への説明資料とかを作るのを後回しにして、大変な目にあった経験が・・・

時間効率を上げるほど創造性が低下する。創造的なアイデアを生むには『拡散的思考』が必要らしい。拡散的思考っていうのは頭の中にとりとめのないイメージや記憶を遊ばせる・・・つまりいろんなことを考えたり、想像したりっていうことか。これって大人になると意識しないとできないようになっている気がする。子供の頃は、勝手にいろんなことが浮かんできて、いろんな遊びを作ってたなぁ。子供の頃は集中するより、拡散思考のほうが得意なのかなぁ。ちなみに、集中して考えることを『収束的思考』って言うらしいです。人間の脳は拡散と収束は同時に使えるようになっていないので、集中力を高めようと思うと創造性は諦めるしかないとのこと。拡散思考で思考を発散させて、アイデアを出して、やることを決めたら、収束思考で集中してやることをやるといいのかぁ。フム。参考になった。

『時間をマネジメントする』という発想の根本に無理がある

この本によると、大半の時間術は時間の使い方と関係ないそうです。ん?・・・どういうこと??ってなりますよね。

人には『単純緊急性効果』というバイアスがあるそうで、これは時間制限があるだけで『このタスクは重要に違いない』と思い込む効果で、もっと大事なことがあると頭でわかっていても、意識はつい緊急のタスクに向かうそう。これはめちゃくちゃ分かる。また、緊急のタスクをこなすと仕事をやった気分になっちゃうんだよな〜。一方、このバイアスに立ち向かえたのは『人生で大事なことが明確だった人』だったそうです。確かに、大事なことが明確だった、というか具体的に考えられたときは、単純緊急性効果の罠には抗えたかな。

で、時間術についてですが、時間術の大半は注意力をマネジメントしているケースが多いそうです。なので、時間術は生産性の解決策にならない。むしろ、タイムマネジメントを意識することで、一層時間が不足しているという認識が生まれて、人生にとって本当に重要な活動をしなくなってしまうそうです。

ここまでをまとめると

  • 万人に効果があるような時間術は存在しない
  • 時間を効率よく使おうとするほど生産性は下がる
  • 時間術の大半はそもそも時間の使い方とは関係ない

時間術で本当に管理すべきものはなにか?

 時間術の話の中で、時間術と仕事のパフォーマンスの相関係数は0.25という話をしましたが、中には時間術で効果が出る人もいたそうです。つまり、人の個体差が時間管理の成果に影響を与えているということ。

人は時間の流れを実感できない

 この本によると、そもそも人は『時間の流れ』など実感できておらず、世界の変化率を『時間』と呼んでいるそうです。ん?ってなりますよね。例えば、目の前にビルを解体した瓦礫の山があるとします。これを見ると我々は『ビルが壊れて瓦礫の山ができた』と思う。その時脳内では瓦礫に関する記憶データベースから、瓦礫はビルであった確率が高いと考えているということが起こっているそうです。つまり『未来』は今の状態の次に起こる確率が高い変化を脳が『予期』したもの。『過去』は今の状態の前に発生した確率が高い変化を脳が『想起』したものだそうです。正しい時間術とはその人の『予期と想起』を調整するものが良いということになるそうです。

まずは自分の予期と想起の傾向を知る

 自分に効果のある時間術を選ぶ前に、まず自分の予期と想起の傾向をまず知るところから初めます。これは初めにやった『時間感覚タイプテスト』で分かります。で、自分の予期と想起に合わせて時間術を選んでやってみると良いですよ。例えば、私の例で行くと

予期:浪費家。予期が薄くて、多いタイプになります。予期が薄いっていうのは自分の将来がまるで他人事のように感じられ、現在の自分とのつながりが感じられないタイプということだそうです。予期が多いのはすべきことのイメージがたくさん浮かんでくるということ。この人に合う時間術は『タイムボクシング』が合うそうです。これは特定のタスクにある一定時間を割り当てて、その枠内で作業を終わらせるという方法です。時間が来るとそのタスクが終わっていようが終わっていまいが、必ず終わりにして次に行く。この方法を実際にやってみたんですが、かなり良かったですね。ただ、やっている途中で声をかけられると中断して『もうどうでもいいや』効果が発動して、グチャグチャになるということがわかったので、自分なりにちょっと工夫しています。

  1. やるべきタスクを書き出す。コツは重要なものも、メールチェックや休憩みたいなものも書き出す
  2. それぞれのタスクに開始時間と終了時間を割り当てる
  3. 邪魔されたくないタスクは、邪魔されない場所を確保
  4. メールチェックとか邪魔されても良いタスクの時間は、緊急に入ってきたものを入れて良い

概ね、上みたいなルールに落ち着きました。これで、パフォーマンスはあまり変わらずに(多分)帰る時間が早くなりましたね。他にもタイプに合わせていろんな時間術の紹介があったので、ぜひ自分の時間感覚タイプと時間術のマッチングを行ってみてください。パフォーマンス改善の一助になる可能性はありますよ

本当の自由を感じるために

 でも、どんなにどんなに時間をうまく使っても効率化から解き放たられないと本当の『自由』は感じられないそうです。これは何となく分かる気がします。最近このあたりの感覚でモヤモヤしているんですよね。結局、時間のことばかり考えていたら、時間に縛られ続けているとうことですよね。

現代人は時間がないというのは本当?

 現代人は時間がないと言っていますが、実際は昔と比較して自由な時間は増えも減りもしていないそうです。総務省の社会調査を行った分析によると、日本人の平均余暇は週あたり110時間(睡眠含む)で1940年代から変っていないそうです。この本は下記のように言っています。

短い時間で最高の成果を残そうとしたり、無駄なタスクをすべてなくそうとしたり、作業スピードの最適化を試みたりと、生産性にこだわる態度こそが問題の根源なのだ

このフレーズは刺さりましたね〜。ほんとそう思います。なんとなく、モヤモヤしていたものが言語化されてスッキリした気分になりました。

時間をうまく使うだけでは本当の悩みは解決されない

 高い目標や生産性を重んじる上司のもとで働くものほどストレスが多く、仕事のモチベーションは低く、病欠の確率が高く、生産性が下がる傾向になるというデータがあるそうです。また、いかに生産性をあげようが、その分だけやるべき作業量も増えていき、あなたの忙しさは一向に改善しないと心理学者は指摘しています。生産性を追求しすぎると、結局の所時間に縛られて、メンタルを病んでしまうし、早く仕事をこなす有能な人ほど、別の仕事がやってくる。これは万国共通の現象みたいですね。

目指すべきゴールは?

 本当のゴールはいつも何かに追われているかのような焦りと不安の感覚を捨て、時間に関する『体質』を改善することだとこの本では言っています。つまり、本当の時間術は時間をうまく使うことではなく、時間に関する考え方を変えるということでしょうか?

生きがいを持つことの意味

 この本では『生きがい』を見つけることで、時間に関する『体質』が改善されると言っています。生きがいの感覚が強い人ほどストレスに強く、免疫システムが健全で寿命が長く、人生の幸福度も高いということがここ数十年の研究でわかっているそうです。確かに、時間を忘れるくらい楽しいことに没頭しているときは、生産と効率の呪縛から開放されていると思います。ん?ということはフロー状態に入りやすいことは、時間感覚の体質改善にも効くということか?また、この本では、『生きがい』の見つけ方、考え方も解説があるので、ぜひ読んでいただきたいですね〜

認知の耐性

 現代人はテクノロジーの発達により、忍耐力が下がっているそうです。MITの研究によると平均40秒ほどしかコンピューターの画面に集中できなかったり、1分も立たずにアプリを切り替えているそうです。これに対しては、小説を読むのがオススメだそう。明確な答えをすぐに求めずに曖昧さを放置できる能力が必要なんだそう。私は昔から小説を含めて本が好きだったおかげでこの感覚はあんまりわからないかな〜。この本には、オススメの小説も載っていて、認知の耐性を鍛えたい人は、これらから始めても良いかも。

退屈の効果

 退屈さを追い求めるのも、時間に関する体質改善に効果があるそうです。我々の時間感覚は過去から未来へと直線的に進みます。ところが、南アフリカのカラハリ砂漠に住む狩猟採集民であるサン人の時間感覚は、一定の周期で変化を繰り返す、始まりと終わりがつながった円環構造をなしているそうです。このサン人たちの時間感覚は超面白くて、友人に子供が生まれたとすると、我々は「友人が子供を授かった」と表現しますが、サン人は「友人に子供が生まれる現象がまた起きた」という表現になるそう。また、サン人に「祖父の名前は?」と聞くと、たいていは「知らない」と答えるそうです。彼らにとっての祖父とは、「家族の中に再び現れた高齢者」という認識でしかなく、「名前」のような固有性に注意を払う必要がないそうです。なので、サン人は時間の追われる感覚がないそうです。この話を読んで思ったことは、時間というのは宗教、風土、文化で変わるんだなぁ。つまり時間は脳の捉え方で変わるようなものということでしょうか。で、退屈を突き詰めることでこのような感覚を味わうことができるそうです。例えば、一つの絵を3時間!かけて見続けるという研究があり、苦痛で逃げ出す人もいたけど、見続けることで画家の繊細なタッチや構図に気づいて、普段では味わえない理解に到達できたということもあるそうです。

まとめ

 ただ、サン人の時間感覚は未来への計画はできません。なので、貯金とか健康に気を使うとかができない。でも、直線的な時間感覚は資本社会には向いていますが、メンタルを病んでしまう可能性はある。つまり、直線的な時間感覚と円環の時間感覚を理解し、自分なりにバランス良く使いこなすことが幸福への道ということだと理解しました。例えば、仕事は直線的な時間感覚、プライベートは円環の時間感覚で過ごすとかかなぁ。この本でも言っていましたが、時間を使いこなして幸福度を上げるには『脳の満足化』を意識すると良さそうですね。これは、AIの父と言われているハーバードサイモンの言葉で、程々の答えで満ち足りることが大事ということかな。

 これまでの常識を覆される内容と実践的なアドバイスが掲載されているので、時間の使い方について悩んでいる人は、一度読んでみることをオススメします。