前回までの記事では、
- 睡眠と老化の関係
- 最適な睡眠時間
- 深部体温や体内時計の活用
- 運動や食事の見直し
- 毎日のルーティンで睡眠の質を底上げする方法
などについて、科学的な視点から詳しく紹介してきました。
👉 まだ読んでいない方は、ぜひ【シリーズ記事一覧】からご覧ください!
さて、今回は
「忙しくて睡眠時間が短くなったとき、どう対処するか?」
にフォーカスします。
「寝ているはずなのに、朝からどんより…」
「夜中に何度も目が覚めてしまう…」
そんなモヤモヤを感じているあなたへ。
忙しい現代人にとって、毎日十分な睡眠時間を確保するのは簡単ではありません。
とはいえ、睡眠不足を放置すると、心身に大きなダメージを与えてしまいます。
この記事では、睡眠時間が短くなってしまったときでも、
少しでも「眠りの質」を確保するための実践テクニックを紹介していきます。
ぜひ、忙しい日々を乗り切るヒントにしてみてください!
また、記事の最後には参考にした書籍もまとめていますので、
さらに深く学びたい方はチェックしてみてくださいね
目次
最初の90分を死守せよ

忙しい日でも、最初の90分のノンレム睡眠は必ず確保しましょう。
なぜなら、最初の90分には、
- 睡眠圧(眠気の強さ)が最も強く解放される
- 成長ホルモンが最大量分泌される
- 自律神経のリセットが行われる
など、心身の修復に不可欠なプロセスが凝縮されているからです。
この最初の90分を確保できるかどうかが、翌日のコンディションを大きく左右します。
私たちの睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠を90〜120分周期で繰り返しています。
この第1周期のノンレム睡眠がもっとも深く、体と脳の回復に大きな役割を果たしています。
とくに注目すべきは、
- 睡眠直後に急激に深くなるノンレム睡眠
- 成長ホルモンの70〜80%がここで分泌される
- 自律神経(交感神経→副交感神経)の切り替えがスムーズに行われる
という点です。
逆に、ここが欠けると、脳疲労が蓄積しやすくなり、
集中力や感情の安定にも悪影響を与えてしまいます。
ちなみに、よく言われる「睡眠は90分サイクル」という説は目安にすぎず、
実際には個人差があり、90〜120分と幅があることも覚えておきましょう。
どんなに忙しくても、
「最低でも90分(できれば120分)」だけは確保して眠る
これを心がけるだけで、体と脳のダメージを最小限に食い止めることができます。

最初の90分が大切な理由
最初の90分を深く眠ることが、健康・若々しさ・脳のパフォーマンス維持に直結します。
この最初の90分間には、
- 自律神経のリセット
- 成長ホルモン(グロースホルモン)の大量分泌
- 脳のコンディション最適化
といった、体と脳を守る重要なプロセスが集中しているからです
① 自律神経がリセットされる

入眠後すぐ、私たちの体では交感神経から副交感神経への切り替えがスムーズに起こります。
この副交感神経優位の状態をしっかり作ることで、心身が深くリラックスし、回復モードに切り替わります。
自律神経と睡眠の関係にはまだ謎も多く、自律神経のバランスが整っているから深く眠れるのか、それと深く眠るから自律神経が整うのかの因果関係はよくわかっていません。ただ、自律神経と睡眠は深く関わっていることはわかっています。
② 成長ホルモンが大量に分泌される

成長ホルモン(グロースホルモン)は、子どもの成長だけでなく、
大人にとっても重要な役割を果たしています。
- 細胞の修復
- 新陳代謝の促進
- 皮膚の弾力アップ
- 筋肉の回復と維持
- アンチエイジング作用
これらはすべて、最初の90分間にピークで分泌される成長ホルモンによる恩恵です。
もしこの時間帯に深く眠れないと、成長ホルモンの分泌量が大きく減少してしまいます。
③ 脳のコンディションが整う

うつ病や統合失調症の患者に共通するのは、
最初の90分間に現れる深いノンレム睡眠が乱れていることです。
質の良い睡眠にはノンレム睡眠だけでなく、レム睡眠も欠かせません。最初の90分のノンレム睡眠を整えてあげることで、レム睡眠も整います。その結果、全体のスリープサイクルも整うことがわかっています。
このことから、最初の90分には、
- 脳の情報整理
- 感情の安定化
- 記憶の定着
といった、脳のリカバリー機能が集中していると考えられています。
忙しくて十分な睡眠時間が確保できないときでも、
「最初の90分だけは死守する」
これが、心身のダメージを防ぎ、翌日のコンディションを守るための鉄則です。
質の良い第1周期(90分)を確保する具体策
最初の90分間を最大限に深く眠るためには、眠るタイミングをコントロールすることが最重要です。
深部体温やホルモン分泌(特にメラトニン、コルチゾール)は、サーカディアンリズム(体内時計)に強く支配されています。
適切な時間帯に眠らなければ、体が「睡眠モード」に切り替わりづらくなり、たとえ寝ても回復力が低下してしまうからです。
ベストな就寝時間は「23時まで」

理想は23時までにベッドに入ること。
もし日付が変わってから眠ろうとすると…
- 体内時計ではメラトニンの分泌が終わり、覚醒ホルモン(コルチゾール)が増加し始めている
- 体温やホルモンバランスが「活動モード」になっている
このため、同じ90分でも睡眠の質は大きく低下してしまいます。
明け方睡眠のデメリット
深夜1時〜3時ごろに眠ろうとすると、
- 覚醒ホルモンが分泌されている
- 自律神経が副交感神経優位になりづらい
- 成長ホルモン分泌も減少する
結果、ウトウトするだけで、しっかり回復できない睡眠になってしまいます。

まとめ
睡眠時間が短くなってしまったときでも
「できるだけ早い時間に90分の深い睡眠を確保する」
これだけで翌日の回復度は大きく違います。忙しくて睡眠時間が十分取れないときの対策案を下記にまとめておきます。
- 徹夜は避けて、眠気があるタイミングで眠る
- 第1周期の90分は最低限確保するように眠る。(最低、90〜120分程度は眠る)
- 眠るのは日付が変わる前、できれば23時までに眠る
- 睡眠時間が十分取れないときは、最低90〜120分眠ったあと、資料作成等の作業に取り掛かる
睡眠不足時の応急処置:パワーナップ(仮眠)のコツ

睡眠不足を少しでもカバーしたいなら、
「昼までに」「正しい姿勢で」「20分以内」
という3つのルールでパワーナップを取りましょう。
適切なタイミングと方法で仮眠を取ることで、
- 睡眠負債をリカバリーし
- 午後のパフォーマンスを維持し
- 夜の睡眠にも悪影響を与えない
という効果が得られるからです。
パワーナップ3つの鉄則
① 午後2時までに仮眠を終える
→ 午後遅くの仮眠は、夜の眠りを妨げます。
② 首と体をしっかり支えた姿勢で寝る
→ リクライニングチェアや、デスク用の昼寝枕などを活用すると◎。
③ 時間は「20分以内」に収める
→ 20分以上寝てしまうと深い睡眠に入り、逆に眠気が残る恐れあり。
仮眠時間と効果の違い
- 5分以内:スッキリ感だけ。疲労回復には不十分
- 10〜15分:脳疲労の回復に最適。集中力や記憶力も向上
- 20分以内:午後のパフォーマンスが持続する
- 30分以上:深い睡眠に入り、寝起きが悪化。夜の睡眠にも悪影響
つまり、最適な仮眠時間は「10〜20分」程度。
寝すぎはむしろ逆効果になるので注意です。
プラスαテクニック:カフェインナップ

パワーナップの直前にコーヒーを一杯飲むと、
- 仮眠中に深い眠りに入りすぎず
- 仮眠後にカフェイン効果でシャキッと覚醒しやすくなります。
カフェインの効果発現は30分後なので、
仮眠+カフェインの組み合わせは非常に理にかなっています。
忙しい日でも、
「昼までに、20分以内の正しい仮眠」
これだけで午後からの集中力やパフォーマンスを劇的にキープできます!
絶対に避けたい『寝落ち』のリスク

どんなに疲れていても、
「寝落ち」は絶対に避けましょう。
寝落ちは睡眠の質を著しく低下させ、翌日のコンディション悪化にも直結します。
寝落ちは、
- 睡眠に適した環境が整っていない
- 身体が十分にリラックスできない
- 睡眠スイッチ(メラトニンリズム)が狂う
といった問題を引き起こします。
結果、回復できないまま翌日を迎えることになりかねません。
よくある寝落ちパターン
- 照明をつけたまま
- ソファに座ったまま
- テレビの音を聞きながら
- スマホを操作しながら
このような状態では、
脳も身体も「眠る準備」ができていないため、
浅い睡眠しか得られません。
その結果、
- 深いノンレム睡眠が得られない
- 途中覚醒が増える
- 睡眠負債がさらに悪化する
といった悪循環に陥ります。
さらに悪い影響
寝落ち後に目が覚めて活動を再開すると、
一時的に睡眠欲求が減り、
「もう一度寝付く」のが非常に難しくなってしまいます。
これも、睡眠リズムを乱す大きな原因です。
「眠るときは、しっかり環境を整えてから寝る」
これが、毎日を元気に過ごすための鉄則です。
疲れて帰宅した日こそ、
- スマホはオフ
- 照明を落とす
- ベッドに直行する
この習慣を意識してみましょう。
まとめ|睡眠は“量”も“質”も、戦略的に確保しよう
忙しくて睡眠時間が短くなってしまったときこそ、
「最初の90分の質」と「戦略的な仮眠」がカギ
です。
睡眠時間が短いと、脳や身体の回復が追いつかず、パフォーマンスや健康に悪影響を及ぼします。
ですが、最も重要な第1周期の深いノンレム睡眠を確保し、
仮眠を上手に取り入れることで、
一時的な睡眠不足を賢くカバーすることができます。
- 最初の90分(第1周期)をしっかり確保する
→ 特に23時までの入眠が理想 - 睡眠不足になったら、昼までに20分以内のパワーナップを取る
- 寝落ちを避け、睡眠の“質”を守る行動を習慣化する
この基本を押さえるだけでも、
睡眠負債を最小限に抑え、ミドル世代からの健康寿命をグッと伸ばすことができるはずです。
睡眠は「夜だけ」でなく、
1日の過ごし方すべてでつくられるライフスキル。
完璧を目指さなくても大丈夫。
小さな改善を積み重ねることが、
未来のあなたへの最高のギフトになります。
一緒に、もっと自分を大切にしていきましょう!
✅ 今日からやってみよう!
- 帰宅したらスマホを置く
- 23時までにベッドに入る
- 昼休みに10〜20分だけ目を閉じる
📚 まだ読んでいない方はこちらもどうぞ:
- 【第1回】睡眠不足の怖さを知ろう
- 【第2回】自分の睡眠を知ろう
- 【第3回】眠りのスイッチ
- 【第4回】朝の光と体内時計で眠りを整える!
- 【第5回】運動と食事を見直して、眠りの質を根本改善!
- 【第6回】毎日のルーティンで眠りの質を底上げ!