前回の続きです。前回の記事を読んでいない方はこちらも合わせて読んでいただくとより理解が深まります(1)。
- 睡眠とアンチエイジングの関係はよく聞くけど、具体的になにが重要なの?
- 眠れてるけど、眠った感じがしないのをなんとかしたい
- 睡眠の質を改善して、日中のパフォーマンスを上げたい
- ベットに入ってもなかなか眠れない
- 睡眠が浅く、夜中に何度も目が覚める
アンチエイジングを考えるうえで、睡眠の質の向上は欠かせません。とはいえ、一言で「睡眠の質を向上させる」と言っても、その方法は多岐にわたり、人によって合う・合わないがあるのが現実です。
実際、私自身もなかなか自分に合う方法が分からず、枕やマットレスを変えたり、アロマや睡眠ガジェットを導入したり、さまざまな方法を試しましたが、すべてが効果的だったわけではありません。
そこで本記事では、「睡眠の質を向上させたい」と考えている方のために、私がこれまでに学び、実践してきたさまざまな手法を、体系的に紹介していきます。
この記事を読めば、自分に合った睡眠改善法を見つける手助けになるはずです。そして、質の良い睡眠を手に入れることで、ミドル世代からのアンチエイジングライフをより充実させることができるでしょう
私自身、睡眠の質を向上させるために、多くの書籍や研究論文を読み、実際に試してきました。その知識と経験をできる限り詰め込んでいますので、ぜひ最後まで読んでみてください。一緒に睡眠の質を高め、若々しく健やかな毎日を目指していきましょう!
また、記事の最後に参考にした書籍を掲載しておきますので、さらに深く学びたい方はチェックしてみてください。
前回は睡眠不足の怖さについての記事を書きました。まだ見ていない人は下記から読んでみてください。今回は自分に睡眠について知る方法についての話題です。
質の良い睡眠、質の悪い睡眠とは?

皆さんは、「質の良い睡眠」「質の悪い睡眠」とはどのようなものだと思いますか?
一般的に、質の良い睡眠とは次のような状態を指します。
- 布団に入るとスムーズに眠れる
- 朝までぐっすり眠れる
- 起きたい時間にスッキリ起きられる
反対に、質の悪い睡眠には次のような特徴があります。
- なかなか寝つけない
- 夜中に何度も目が覚める
- 朝起きても疲れが取れていない
- ぐっすり眠れた感じがしない
このように主観的な判断で質の良い睡眠・悪い睡眠を語ることが多いのではないでしょうか?
睡眠の質を改善するには主観的な判断と客観的な判断の両方から考える必要があります
「眠れていない」と感じる理由とは?

眠れていないと訴える人の脳波を測定すると、途中で何度か目が覚めているものの、実際には十分な睡眠が取れているケースも多く見られます。特に、夜中に目が覚めたときに時計を確認すると、「こんなに何度も起きている」と意識してしまい、眠れていないという印象が強まることがあります。そのため、中途覚醒したときは時計を見ないほうがよいでしょう。寝室に時計を置かないことも一つの工夫になります。
ここで大切なのは、不眠には 「睡眠誤認を伴う不眠」 と 「客観的な不眠」 の2種類があるということです。
睡眠誤認を伴う不眠
これは、「眠れない」と感じているものの、脳波を測定すると実際には眠れている状態を指します。つまり、本人は「しっかり眠れていない」と思っていても、客観的には十分な睡眠が取れているのです。
実際、不眠を訴える人の睡眠を詳しく調べてみると、「思っていたよりも眠れていた」というケースは珍しくありません。不眠=睡眠時間が足りていない、と思いがちですが、実は「眠っているのに疲れが取れない=睡眠の質の問題」である場合もあります。とはいえ、本人が不調を感じている以上、その睡眠が最適とは言えないのも事実です。
客観的な不眠
こちらは、脳波などの測定によっても「眠れていない」と判断される状態です。こうした不眠の症状がある場合、まずは自分の睡眠の状態を客観的に知ることが重要です。自分の睡眠パターンを理解することで、不眠に対する不安が和らぎ、改善につながることもあります。
睡眠の悩みがあるときは、「本当に眠れていないのか?」を冷静に見つめ直し、必要に応じて専門家に相談することも大切です。
「自分の睡眠を知る」が良い睡眠への第一歩
睡眠には個人差があり、生活環境や健康状態によって大きく変わります。そのため、「これさえやれば、誰でもぐっすり眠れる!」という万能な方法は、残念ながら存在しません。
まず大切なのは、自分の睡眠の状態を知ることです。質や量を見直し、自分に合った睡眠習慣を整えることが、快適な眠りへの第一歩となります。
自分の睡眠を知るための方法を3つ紹介します。大切なのはどれか一つではなく、下記のすべてやってみることで、自分の睡眠がわかってきますので、ぜひやってみてくださいね。
- 自分の理想の睡眠を知る方法
- 自分に最適な睡眠時間を知る方法
- 自分の睡眠を可視化する方法
理想の睡眠は遺伝子で決まる!

自分に合った睡眠をとるためには、まず 「クロノタイプ」 を知ることが大切です。クロノタイプとは、生体の体内時計(概日リズム)に基づく「睡眠・覚醒の傾向」を示す概念です。人それぞれ、朝型・夜型といった違いがあり、以下のように分類されます。
- 朝型(モーニングタイプ): 早寝早起きを好み、午前中に集中力が高まる
- 夜型(イブニングタイプ): 夜遅くまで活動でき、夜に集中力が高まる
- 中間型(ニュートラルタイプ): 朝型と夜型の中間で、特定の時間帯に偏らない
これらのクロノタイプは 約300個の遺伝子の組み合わせ で決まるとされており、生活習慣の影響を受けるものの、大きく変えることは難しいと考えられています。
例えば、夜型の人が無理に早起きを続けると、夜になってもなかなか眠くならず、結果として慢性的な睡眠不足に陥ることがあります。その状態が続くと、うつ病やメタボリックシンドロームのリスクが高まる可能性も指摘されています。自分のクロノタイプに合わせたリズムで日常生活を送ることはとても大切です。
自分のクロノタイプを知る方法
自分のクロノタイプを知るには、国立精神・神経医療研究センターが公表している 「MEQ-SA」 というセルフチェックを活用する方法があります。
また、アメリカの睡眠専門家 マイケル・ブレウス博士 が提唱した「4つの動物タイプ」による分類も面白い視点です。どちらも下記にリンクを張っておくので、興味のある方は、ぜひ試してみてください。
クロノタイプは年齢とともに変化する
クロノタイプは一生固定されるわけではなく、 年齢とともに変化 します。
- 10歳頃まで :朝型
- 思春期~20代 :夜型にシフト
- 40代以降 :朝型へ移行
- 高齢期(70~80歳):さらに朝型の傾向が強まる
また、 季節によっても睡眠時間は変化 します。
- 春~夏 :睡眠時間が短くなる
- 秋~冬 :睡眠時間が長くなる
これは 日照時間の影響 を受けるためです。
より良い睡眠を得るためには、 自分のクロノタイプに合った生活リズムを意識すること が大切です。「理想の睡眠」に無理に合わせるのではなく、 自分にとって心地よいリズム を見つけることが、質の良い眠りにつながります。
自分に最適な睡眠時間を知るには?

「自分にとってちょうど良い睡眠時間はどれくらいなのか?」と疑問に思ったことはありませんか? 実は、適切な睡眠時間には個人差があり、一定の方法で見極めることができます。ここでは、 自分に最適な睡眠時間を知るための2つの方法を紹介します。
数日ごとに少しずつ睡眠時間を伸ばす
- 休日の寝溜めをやめる
- 普段より30分早く就寝する
- 体調を確認する。これを2〜3日続ける。
- 更に15分早く寝てみる
- 以後、3と4を繰り返す
この方法を続けていき、 「これ以上早く寝ても眠れない」 というポイントが、自分にとって必要な睡眠時間になります。
注意点 :寝る1時間前は最も眠りにくい時間 という研究結果があります。実際に「早く寝ようとしても眠れなかった」という経験がある方もいるかもしれません。その場合は、この方法が適していない可能性があります。眠れる方はぜひ試してみてください。
4日間眠れるだけ長く眠る
この方法は、 ゴールデンウィークや年末年始など、4日以上の連休が取れるとき に試すのが理想的です。
- 1日目:普段どおりの時間に寝て、目覚ましをかけずに自然に目が覚めるまで眠る。睡眠負債が溜まっていると、10時間以上眠ることもあるがOK
- 2日目:この日も目覚ましをかけずに眠る。前日よりも睡眠時間が短くなるが、まだ長めの傾向が続く。
- 3日目:同じように自然に目が覚めるまで眠る。前日よりもさらに短くなり、安定してくる。
- 4日目:自然に目覚めた時の睡眠時間が、あなたにとっての「十分な睡眠時間」となる。
注意点としては
- お酒を飲まずに眠る(アルコールは睡眠の質を下げる)
- 毎日同じ時間に就寝する
- 快適な寝室環境を整える(遮光カーテンや適切な室温を意識する)
- ベッドの上でスマホを見たりしてダラダラ過ごさない(最適な睡眠時間がわからなくなる)。
ショートスリーパーは努力でなれるのか?
ちなみに、「短時間睡眠でも問題なく活動できる人」がいるのをご存じですか? 彼らは「ショートスリーパー」 と呼ばれ、6時間未満の睡眠 でも日中のパフォーマンスが低下しません。
「自分もショートスリーパーになれたら…」と思うかもしれませんが、実は ショートスリーパーは遺伝で決まることが研究で明らかになっています。
カリフォルニア大学の研究によると、ショートスリーパーの人は 10万人に4人程度 しかいないと言われています。また、彼らの時計遺伝子に特有の変異があることが分かっており、これは後天的な努力やトレーニングで身につけることはできません。
つまり、「睡眠時間を削っても大丈夫な体質」は、生まれつきのものなのです。無理に睡眠時間を短くすると、体調を崩したり集中力が低下したりするため、自分に合った適切な睡眠時間を見つけることが大切です。
自分の睡眠を可視化する

睡眠を改善するためには、自分の睡眠を可視化すること がとても重要です。可視化する際には、 主観的判断 と 客観的判断 の両方を行うことがポイントになります。
主観的判断 – 自分の感覚を記録する
まずは、自分の睡眠に対する感覚を大切にしましょう。
- 朝起きたとき、だるさを感じる
- 寝つきが悪かったと感じる
- 眠りが浅かった気がする
- 日中に眠気を感じ、もっと眠りたいと思う
- 日中のコンディションが良く、集中力が続いている
こうした自覚症状を意識することが大切です。
「何となく眠れた気がしない」など、 主観的な感覚は決して軽視してはいけません。
対策として、起床後や日中に感じたことをスマホやメモ帳に記録する習慣をつけると、睡眠の傾向が見えてきます。
客観的判断– 数値で睡眠を把握する
「自分の感覚だけでなく、もっと客観的に睡眠を知りたい」
そんなときはデータを活用しましょう。
本来睡眠を客観的に知ろうとすると、病院などで使用する「睡眠ポリグラフ(PSG)」を使用します。これは、脳波・筋電図・眼球運動・心電図などを測定し、 30秒ごとに睡眠の状態を4段階で判定するものです。
しかし、これを自宅で行うのは現実的ではありません。
そこで、 手軽に睡眠を記録する方法 を紹介します。
手軽にできる睡眠の客観的測定方法
- 睡眠日誌をつける(毎日の就寝・起床時間、睡眠の質を記録)
- 睡眠アプリを活用する(例:Sleep Cycleなど)
- 家族やパートナーに観察してもらう(いびきをかいているか、深く眠れていそうかなど)
- スマートウォッチで測定する(例:apple watchなど)
- スマートリングで測定する(例:oura ringなど)
- インソムノグラフで測定してみる
スマートウォッチやスマートリングの精度は?
「Apple Watch や Oura Ring って、どれくらい正確なの?」
そう思ったことはありませんか?
実は、これらの 睡眠ガジェットの精度を調査した研究 があり、その結果がパレオな男さんのブログで紹介されていました。その記事によると、 睡眠時間の測定精度は非常に高い ものの、 睡眠の「深さ」や「段階」の検出はまだ発展途上 とのこと。
とはいえ、 「毎日自分で記録をつけるのは面倒…」 という方には、便利なツールです。
実際、私も自分で記録するのが面倒なので「Oura Ringを活用 しています。
このあたりの詳しい話は、また別の機会に紹介しますね。