これまでの記事では、まず「自分の肌を正しく知ること」の大切さをお伝えし、肌タイプの考え方や診断チャート、そして肌質に合った洗顔方法・洗顔料の選び方を解説してきました。
「まだ見ていないよ」という方は、ぜひ先にチェックしてみてください。
- 肌が変われば印象が変わる。40代からの正しいスキンケア入門【第4回】“自分の肌タイプ”がはっきり分かる!診断チャートで今日から迷わないケアを
- ミドル世代男性の正解|肌タイプ別おすすめ洗顔料3選【第7回】
そして今回のテーマは──多くのミドル男性が一番つまずきやすい 「保湿」 です。
「どの保湿剤を選べばいいかわからない」
「高いクリームを買ったけど効いている気がしない」
「乾燥もベタつきもある…何を信じれば?」
こんな悩みを感じていませんか?
実は、化粧品原料の開発に携わっていた私自身も、ドラッグストアの棚を前に同じことを思っていました。
保湿剤は種類が多すぎて、違いが非常にわかりにくい。
だからこそ“なんとなく選ぶ”人やパッケージの「乾燥肌の人に」といった文言だけで選ぶ人が多く、その結果、肌に合わないケアで状態を悪化させてしまうケースも珍しくありません。
でも大丈夫。
この記事では、保湿の仕組み(バリア機能) から、
保湿剤の役割・選び方、
そして 肌タイプ別の最適解 まで、図解と表を交えてわかりやすく解説していきます。
読むだけで、あなたの肌が「何を必要としているのか」がはっきりわかり、
今日から迷わずに保湿剤を選べるようになります。
保湿の基本と皮膚のバリア機能

まず初めに、皮膚のバリア機能と保湿の基本について解説します。
皮膚のバリア機能の構造と役割
保湿を正しく理解するためには、まず「皮膚のバリア機能」がどんな仕組みで働いているのかを知る必要があります。
バリア機能とは、外部刺激から皮膚を守り、水分が逃げないようにする“肌の防御システム”のこと。
実はこのバリア、図で見るとレンガの壁のような構造をしています。

(出典:化粧品成分オンライン)
- レンガ(角質細胞):核を持たない扁平な細胞で、内部には天然保湿因子(NMF)がぎっしり。NMFはアミノ酸や乳酸を含み、水分を抱え込む“うるおいの貯金箱”のような役割を果たします。
- モルタル(細胞間脂質):セラミド・脂肪酸・コレステロールが適切な割合で並び、レンガ同士をしっかりつなぎとめます。この“モルタル”がバリアの鍵。
このレンガとモルタルが整っていれば、水分が逃げず、外の刺激物質も入りにくい強い肌が維持されます。
しかし、 洗いすぎ・紫外線・加齢・ストレス などの影響でこの構造が崩れると……
- 皮膚の水分蒸発が増える → 乾燥が悪化
- 外部刺激が侵入しやすくなる → 敏感肌の原因
- 肌がごわつき、くすみ、赤みを引き起こす → 老け見えにつながる
つまり、保湿は単に「乾燥を防ぐ」だけの行為ではなく、
“壊れやすいレンガの壁を補修し、バリア機能を正常に維持する作業” なんです。
保湿剤の3つの主な機能

保湿剤と言っても、役割はすべて同じではありません。
市販のクリーム・乳液・ジェル・オイルなどは、実は大きく3つの機能を組み合わせて作られています。
この3つを理解すると、広告やパッケージに惑わされず、
「自分の肌にはどのタイプの保湿剤が必要なのか?」が一気にわかるようになります。
| 機能 | 目的 | 代表的な成分 |
| 保湿成分 | 水分を皮膚に引き込み、補給する | ・ヒアルロン酸 ・グリセリン ・尿素 ・ソルビトール など |
| 閉塞剤 | 皮膚表面にバリアを形成し、 水分蒸発を防ぐ | ・ワセリン ・ミネラルオイル ・ミツロウ ・シアバター ・ジメチコン など |
| エモリエント剤 | 皮膚の脂質を補い、細胞間の隙間を埋めて皮膚を柔らかくし、バリア機能を高める | ・セラミド ・コレステロール ・植物オイル(ホホバオイルなど) など |
保湿剤は一見どれも同じに見えますが、実際には 「何を補い、何を守るのか」 がそれぞれ異なります。
多くの保湿剤が複数の成分を組み合わせて作られているのは、どれか1種類だけでは十分な保湿効果が得られないからです。
🔍 1. 保湿成分(Humectants)の役割
保湿成分は、
・空気中の水分を肌に引き寄せる
・角質層の中に水分を抱え込む
という2つの働きがあります。
ただし、湿度が低い環境(冬の暖房・飛行機内など)では、
“空気中に水分がないため、肌の奥の水分を逆に引き上げてしまう”ことがあります。
そのため、湿潤剤だけの保湿は 乾燥を悪化させる ケースもあり、
閉塞剤と組み合わせるのがベストです。
🔍 2. 閉塞剤(Occlusives)の役割
閉塞剤は、
「上からフタをして、水分が逃げるのを防ぐ」
役割を担います。
ワセリンが代表例で、
・アレルギーを起こしにくい
・保存料や香料を含まない
・皮膚の水分蒸発を90%以上防ぐ
といった強力な保湿力があります。
ただし、油分が多くベタつきやすいため、
乾燥肌には向いていますが、脂性肌には重たく感じることもあります。
🔍 3. エモリエント剤(Emollients)の役割
エモリエント剤は、肌の表面を柔らかく滑らかにする成分。
角質の“ひび割れ”をなめらかに埋め、触れたときに“ふっくら”と感じさせます。
水分保持力そのものは強くありませんが、
「肌の質感を良くする」 ことに非常に優れています。
敏感肌・乾燥肌・エイジング肌のどれにも重要な成分群です
💡まとめ
3つの成分はそれぞれ役割が違い、
「水分を取り込む、フタをして守る、肌を柔らかくする 、」
というように、肌に対する機能が異なります。
だからこそ、
保湿剤を選ぶときには 「どの成分がどれくらい入っているか」 がとても重要。
そして、
乾燥肌・脂性肌・敏感肌など、肌タイプによって必要なバランスは変わります。
次の章で、それぞれの肌タイプに合った選び方をわかりやすく整理します。
肌タイプ別|最適な保湿剤の選び方

肌タイプ別「失敗しない保湿剤の選び方」
保湿剤は大きく
①水分を引き寄せる成分(保湿成分)
②水分を逃がさないフタ(閉塞剤)
③肌を柔らかく整える成分(エモリエント)
の3つから構成されていますが、
どのバランスが必要かは 肌タイプによって大きく違います。
ここでは下表の内容をベースに、
「なぜその肌質にその保湿剤が合うのか?」
までわかるように解説します。
| 肌タイプ | 推奨される保湿ケア | 避けるべき点 |
| 乾燥肌 | ・クリーム ・バーム ・高保湿乳液 ・セラミド配合保湿剤 | ・ジェルだけの保湿 ・軽すぎる乳液 |
| 脂性肌 | ・ジェル / さっぱり乳液 ・ナイアシンアミド入り保湿剤 ・オイルフリーのクリーム | ・ワセリン(油分が多くテカりやすい) ・バーム系 → 毛穴詰まり・テカリ悪化の原因に |
| 混合肌 | ・皮脂コントロール系のジェル(Tゾーン) ・セラミド乳液(Uゾーン) ・軽めのクリーム(乾燥が強い場合) | 全顔に重たいクリーム → Tゾーンのテカり悪化 ・全顔に軽いジェル → Uゾーンの乾燥が悪化 |
| 敏感肌 | ・低刺激の乳液 ・クリーム(セラミド配合) ・ワセリン(部分使い) | ・スクラブ入り ・アルコール強め ・香料入り → 炎症・赤みを悪化させやすい |
🔵 乾燥肌タイプ(Dry)
✔ 最適:湿潤剤 + エモリエント + 閉塞剤の3点セット
(例:ヒアルロン酸、グリセリン、セラミド、ワセリンなど)
乾燥肌は皮脂・NMF・セラミドの不足が同時に起きているため、
“水分を抱える力”と“水分を閉じ込める力”の両方をサポートする必要があります。
保湿力の高い乳液・クリームが必須。セラミド、アミノ酸、ヒアルロン酸など潤い成分、スクワランなど皮脂膜代わりになる成分で保湿すると良いでしょう。
非常に乾燥している場合や敏感症状があるときはワセリンでの保護も有効です。
● 向いているアイテム
・クリーム
・バーム
・高保湿乳液
・セラミド配合化粧水
● 避けたいもの
・ジェルだけの保湿
・軽すぎる乳液
→ 水分が逃げてしまい、乾燥が改善しない
🟡 脂性肌タイプ(Oily)
✔ 最適:軽めの保湿 + 皮脂バランスを整える成分
(例:ナイアシンアミド、ジェル系保湿剤)
脂性肌でも“保湿は必要”。
保湿を怠ると、逆に皮脂分泌が増える“インナードライ”になるケースも。
オイルフリータイプの乳液、美容液、ジェルなどでの保湿が良いでしょう。
ビタミンAやC配合のアイテムは皮脂分泌の抑制に効果的です。
● 向いているアイテム
・ジェル / さっぱり乳液
・ナイアシンアミド入り化粧水
・オイルフリーのクリーム
● 避けたいもの
・ワセリン(油分が多くテカりやすい)
・バーム系
→ 毛穴詰まり・テカリ悪化の原因に
🟢 混合肌タイプ(Combination)
✔ 最適:TゾーンとUゾーンで“分けるケア”
Tゾーン=さっぱり
Uゾーン=しっとり
が基本になります。
水分と油分がバランスよく配合された乳液が推奨。乾燥部位にはしっかり油分を補給し、Tゾーン(脂性部位)には油分が多い化粧品の使用を控える
● 向いているアイテム
・皮脂コントロール系のジェル(Tゾーン)
・セラミド乳液(Uゾーン)
・軽めのクリーム(乾燥が強い場合)
● 避けたいもの
・全顔に重たいクリーム
→ Tゾーンのテカり悪化
・全顔に軽いジェル
→ Uゾーンの乾燥が悪化
🔴 敏感肌タイプ(Sensitive)
✔ 最適:刺激の少ない処方+保湿力のバランス型
(例:セラミド、アロエ、グリセリン)
敏感肌はバリア機能が弱いため、まず「刺激を入れないこと」が前提。
香料・アルコール・界面活性剤が強いものはNG。
バリア機能の保護を優先し、セラミドやナイアシンアミドなどの成分を使うと刺激が減りやすい。保湿・保護のみのシンプルケアに留めると良いでしょう
● 向いているアイテム
・低刺激の乳液
・クリーム(セラミド配合)
・ワセリン(部分使い)
● 避けたいもの
・スクラブ入り
・アルコール強め
・香料入り
→ 炎症・赤みを悪化させやすい
保湿剤の使い方(塗るタイミング&塗布のポイント)

🔵 保湿剤は“肌が湿っているうち”に塗るのが最も効果的
洗顔後やお風呂上がりなど、顔が乾く前に保湿剤を塗ると、
肌表面に残った水分をそのまま閉じ込めて“貯水池”のようにキープ できます。
これはよく推奨されている方法で、乾燥肌や敏感肌ほどこの差が明確に出ます。
🔵 乾燥肌・敏感肌は「ミスト→保湿剤」の2ステップがおすすめ
保湿剤を塗る直前に、
温泉水スプレーなどのフェイシャルウォーター
を軽く吹きかけると、水分補給がより安定します。
特に乾燥が強い季節は、
「ミスト→保湿剤」は保湿力が段違いです。
🔵 美容液(セラム)を使うなら“保湿の前”
保湿はあくまで最後のフタ役。
セラムはその前に塗ることで、本来の効果を最大限に発揮します。
🔵 夜の保湿はとくに重要
夜間は肌の水分蒸発が最も激しく、
さらに睡眠中は修復サイクルがまわる時間帯。
寝る前の保湿は、朝の肌コンディションに直結します。
🔵 マッサージは原則不要。敏感肌は特にNG
保湿剤塗布後の「顔揉みマッサージ」は
メリットが医学的に証明されていないうえに、
・摩擦
・圧迫
・刺激
が加わることで敏感肌を悪化させるケースがあります。
特にバリアが弱っているときは、摩擦ゼロでそっと塗るだけが正解。
保湿を支える生活習慣:食事と水分補給の科学

最後に、大切なことをお伝えしておきたいと思います。
保湿はスキンケアだけで完結するわけではありません。
実は、毎日の食事や生活習慣も肌バリアに大きく影響しています。
■ 脂質を極端に減らす食事は肌を乾燥させる
「ヘルシー=低脂肪」と考えて油を避けすぎると、
皮膚バリアに必要な 脂肪酸・コレステロール が不足し、
結果的に乾燥を悪化させることがあります。
とくにコレステロールは、
角質の水分保持に欠かせない“重要パーツ”のひとつ。
■ 良質な脂質を食事に取り入れるのが鍵
・青魚に多いオメガ3
・ナッツ類
・オリーブオイル
・卵
など、バリア機能の原料になる脂質を適度に摂ることは、
スキンケアでは補い切れない部分を支えてくれます。
■ “水をたくさん飲めば肌が潤う”は誤解
よくある美容本には
「毎日2Lの水を飲めば肌が潤う」と書かれていますが、
これは科学的には正しくありません。
飲んだ水分は皮膚の水分保持にはほとんど影響しません。
乾燥は バリア機能が弱って水分が逃げている状態 なので、
外側から保湿しない限り改善しません。
👉 水分補給は健康には大事ですが、
“肌の乾燥対策”には外側からの保湿が基本 だと覚えておきましょう。
今回は保湿の基本について紹介させていただきました。次回以降は肌タイプ別のおすすめ保湿剤についての記事を書いていきますのでお楽しみに〜
