レチノールだけじゃない。40代男性が知るべき「もう一つの成分」

レチノールがシワに効く。スキンケアに少しでも興味がある方なら、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

ですが、レチノールには弱点があります。赤み、皮剥け、光感受性――つまり使い始めに肌が荒れやすく、朝に塗れないという面倒さがつきまといます。忙しい40代のビジネスパーソンにとって、これは地味にハードルが高いものです。

そこで知っておいていただきたいのが「ナイアシンアミド」という成分です。

厚生労働省がシワ改善の有効成分として正式に承認した医薬部外品の成分は、現在5つ。ナイアシンアミドはそのうちの一つであり、しかもシワ改善と美白の「2つの効果」で厚労省のお墨付きを持つ唯一の成分でもあります。

さらにレチノールとは違い、一般的に低刺激で、朝も夜も使えます。やるべきことは「今使っている保湿剤を、ナイアシンアミド入りに替える」だけ。ステップは増えません。

この記事で分かること:

  • ナイアシンアミドとは何か(体にもともとある安全な成分)
  • 科学的に証明された4つの効果(シワ・シミ・テカリ・乾燥)
  • なぜ40代男性に「特に」向いているのか
  • 取り入れ方のポイント(濃度の選び方、効果実感までの期間)

ナイアシンアミドとは? ── 体の中にもある「ビタミンB3」

ナイアシンアミドとは?

ナイアシンアミドは、ナイアシン(ビタミンB3)の一形態です。水溶性ビタミンで、体内で500種類以上の酵素反応に使われる物質(NAD/NADP)の原料になっています。つまり、もともと私たちの体に存在し、エネルギー代謝に欠かせない成分なのです。

化粧品への配合実績は20年以上。「新しい成分を試すのは不安」という方も安心してください。十分に使い込まれた実績があります。

承認の歴史を振り返ると:

  • 2007年:医薬部外品の美白有効成分として厚生労働省に承認(「メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ」)
  • 2017〜2018年:シワ改善の有効成分として承認

つまり日本の規制機関が2度にわたって効果を認めた成分です。

ちなみに「ナイアシンを飲むと顔が真っ赤になる」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。あれはニコチン酸という別の形態の話です。ナイアシンアミドとは化学構造が異なるため、フラッシング(顔面紅潮)はほとんど起きません。塗る分にはまったく心配無用です。

ナイアシンアミドの効果4つ ── 科学的に証明されたエビデンス

ナイアシンアミドの最大の特長は、1つの成分で4つの肌悩みに同時にアプローチできること。まずは全体像を把握しておきましょう。

効果ひと言でいうと承認・エビデンス
シワ改善コラーゲンを増やし、壊す酵素を抑える厚労省承認 / RCT複数
シミ予防メラニンの「輸送」を止める厚労省承認 / RCT複数
テカリ抑制皮脂の分泌を抑えるRCT(日本人100名)
バリア強化肌が水分を逃がさなくなる=乾燥しにくくなるin vitro + ヒト試験

このうちシワ改善と美白は医薬部外品の承認効能、テカリ抑制とバリア強化は臨床試験で確認された効果です。以下、それぞれのエビデンスを見ていきます。興味のある効果だけ読んでいただいても構いません。

効果1:シワを改善する(厚労省承認)

ナイアシンアミドの効果と根拠

2017〜2018年、厚生労働省はナイアシンアミドをシワ改善の有効成分として正式に承認しました。いわば「シワ改善効果を国が認めた成分」です。

臨床試験のデータを見てみましょう。

近畿大学のKawadaらによる試験(2008年)では、日本人女性30名を対象に(うち28名が試験を完了)、4%ナイアシンアミド配合の保湿剤を8週間使用。その結果、28名中18名(64%)にシワの改善が認められました。著効(はっきり改善)が4名、有効(改善あり)が14名。プラセボ(偽薬)と比較して統計的に有意な差が出ています(p<0.001)。小規模ながらランダム化プラセボ対照試験であり、信頼性は高いと言えます。

海外の試験でも裏付けがあります。P&G社のBissettらの試験(2005年)では、白人女性50名に5%ナイアシンアミドを12週間使用してもらい、小ジワ・シワの減少に加え、肌の弾力性の向上も確認されました。さらに40歳から60歳の女性50名を対象にした別の試験(Bissett et al., 2004)でも、シワ・シミ・赤み・くすみのすべてが有意に改善しています。まさに40代以降の肌悩みにぴったりのデータです。

メカニズムとしては、培養細胞の実験でコラーゲンの合成を促進しつつ、コラーゲンを壊すECM(細胞外マトリックス)分解酵素の働きを抑えることが確認されています(Bissett et al., 2005)。「増やしながら壊さない」という二重のアプローチです。

なお、臨床試験の被験者は女性が中心ですが、コラーゲン合成やECM分解酵素の抑制といった作用メカニズムは男女共通の細胞機能であり、男性の肌にも同様の効果が期待されます。

効果2:シミを防ぐ(厚労省承認)

ナイアシンアミドの美白メカニズム

2007年に美白の有効成分としても承認されています。ナイアシンアミドの美白メカニズムは、他の成分とはまったく異なります。

ハイドロキノンなど従来の美白成分は、メラニンの「生成」を止めます。一方、ナイアシンアミドはメラニンの「輸送」を止めるのです。

わかりやすく言うと、シミ工場(メラノサイト)で作られた黒い色素が、肌の表面の細胞へ運び出される「ベルトコンベア」を途中でストップさせるイメージです。培養細胞の実験では、このメラニンの輸送が35〜68%抑制されることが確認されています(Hakozaki et al., 2002)。もちろんこれは培養細胞の実験で確認された数値であり、「シミが35〜68%薄くなる」という意味ではない点にはご注意ください。

実際の使用試験では、18名の女性に5%ナイアシンアミド配合の保湿剤を使ってもらったところ、4週間で色素斑が有意に減少しました(Hakozaki et al., 2002)。

注目すべきは日焼け止めとの相乗効果です。120名を対象にした大規模使用試験では、2%ナイアシンアミド配合の日焼け止めで美白効果が高まることが確認されています(Hakozaki et al., 2002)。日焼け止めを毎日塗る習慣がない男性こそ、ナイアシンアミドとの「二重防御」を始めていただきたいところです。

効果3:テカリ(皮脂)を抑える

男性にとってありがたいのが、この皮脂抑制効果です。しかもたった2%という低濃度で効果があります

Draelosらの二重盲検試験(2006年)では、日本人100名(治療群50名・プラセボ群50名)を対象に2%ナイアシンアミド保湿剤を4週間使用。2週間後には皮脂の分泌が有意に減少しました。白人被験者30名の追試では、皮脂レベルの一部指標(カジュアル皮脂レベル)で有意な低下が確認されています。ただし皮脂排泄率の低下は有意ではなく、効果の出方に民族差がある可能性も指摘されています。

メカニズムとしては、ナイアシンアミドが細胞内のエネルギーセンサーであるAMPKという酵素を活性化し、脂肪酸の合成を抑えることで皮脂が減るという説が有力です。臨床的に皮脂が減ることは確認されていますが、正確な仕組みについてはまだ研究が続いています。

ポイントは「2%で効く」ということ。市販のナイアシンアミド配合保湿剤のほとんどはこの濃度を超えているので、普通に製品を選べばテカリ抑制効果は期待できます。

効果4:肌のバリア機能を強化する(乾燥しにくくなる)

要するに「肌が水分を逃がさなくなる=乾燥しにくくなる」という効果です。地味に聞こえるかもしれませんが、実はこれが非常に重要です。乾燥は小ジワの原因でもあり、乾燥→シワの悪化という悪循環を断ち切ることができます。

カギとなるのはセラミド。肌のバリア機能を担う最重要成分です。

培養細胞の実験では、ナイアシンアミドを加えるとセラミドの合成量がコントロール比で4.1〜5.5倍に増加しました(Tanno et al., 2000)。これは培養細胞の実験で確認された数値であり、実際の肌で同じ倍率になるわけではありませんが、セラミド合成を促すメカニズム(SPTという酵素の活性化)は明確に特定されています。

ヒトでの使用試験でも、2%ナイアシンアミドを4週間塗り続けた部位では、水分の蒸発量(TEWL)が有意に減少(p<0.01)し、実際に角質のセラミドと脂肪酸が増加したことが確認されています。バリア機能が強化された実用的な証拠と言えるでしょう。

なぜ40代男性にナイアシンアミドが「特に」向いているのか

男性の肌は「テカるのに乾く」 ── インナードライの科学

男性の肌には、女性とは異なる厄介な特徴があります。

  • 皮脂の分泌量は女性の約2〜3倍。しかも50代後半までほとんど減らない
  • 一方で、肌の水分量は女性の約30〜50%。水分の蒸散量は女性の2倍以上

つまり「表面はテカるのに、中は乾いている」というインナードライ状態が、男性の肌のデフォルトなのです(マンダム, 2006)。

多くの男性はテカリを気にして洗浄力の強い洗顔料でゴシゴシ洗ってしまいます。すると必要な潤いまで奪われ、バリア機能が壊れ、さらに乾燥と皮脂過剰の悪循環に陥ります。

ここでナイアシンアミドが効く理由がおわかりいただけるのではないでしょうか。前のセクションで見たように、ナイアシンアミドは皮脂の分泌を抑えながら、同時にセラミドの合成を促してバリア機能を強化しますテカリを抑えつつ内側の潤いを満たすという、インナードライ肌が求める相反するニーズを1つの成分で同時に満たせる稀有な存在です。

さらに40代の肌の生まれ変わり(ターンオーバー)は約45〜55日と、20代(約28日)の約2倍。古い角質やメラニンが肌に残りやすく、くすみやシミが目立ちやすくなります。ナイアシンアミドのメラニン輸送抑制効果は、こうした悩みへの対策として有望です。

1成分で4大悩みに対応 ── レチノールとの違い

シワ・シミ・テカリ・乾燥。これは40代男性の4大肌悩みといっていいでしょう。ナイアシンアミドは、この4つを1成分でカバーできます。美容液を何本も重ねる必要はありません。

レチノールとの違いを表にまとめました。

 ナイアシンアミドレチノール
刺激性一般的に低刺激赤み・皮剥けが出やすい
光感受性なし(朝も使える)あり(夜のみ推奨)
使用タイミング朝・夜どちらもOK夜のみ
主な効果シワ・シミ・テカリ・乾燥シワ・シミ
初心者向き△(慣らし期間が必要)

資生堂の研究によると、意外にも男性の肌は女性よりストレス耐性が低いとされています。だからこそ、低刺激で朝晩使えるナイアシンアミドは、男性のスキンケアの「最初の一手」として最適なのです。

元原料開発者のワンポイント

原料メーカーで処方開発をしていた立場から言うと、ナイアシンアミドは「配合のしやすさ」も群を抜いています。水溶性で安定性が高く、pHや温度の制約が少ない。だから多くのメーカーが保湿剤に配合できますし、他の有効成分との相性トラブルも起きにくいのです。つまり「ナイアシンアミド配合」と書かれた製品は安定した品質のものが多いということでもあります。消費者には見えにくいポイントですが、これは成分選びの隠れた安心材料です。

取り入れ方 ── 保湿剤を「ナイアシンアミド入り」に替えるだけ

濃度の選び方

ナイアシンアミド配合の製品を選ぶとき、最も重要なのが濃度です。以下の表を参考にしてみてください。

濃度おすすめ度対象期待できる効果
2〜3%敏感肌・入門者皮脂抑制、バリア改善
4〜5%◎(迷ったらコレ)一般的な推奨シワ改善、美白、皮脂抑制、バリア強化
5〜10%エイジングケア重視・上級者より強いエイジングケア効果(赤み・かゆみリスクあり)
10%超×(非推奨)乾燥・バリア機能低下の可能性。大規模試験データが不足

迷ったら4〜5%を選べば間違いありません。シワ改善のKawada試験(4%)、美白・エイジングケアのBissett試験(5%)など、主要な臨床試験はこの濃度帯で効果を実証しています。2024年の包括的レビュー論文でも「化粧品としては4〜5%が効果と安全性のバランスが最も良い」と結論づけられています。

なお、「シワ改善」や「シミ予防(美白)」の効果を製品パッケージに表示できるのは、ナイアシンアミドを有効成分として配合した医薬部外品のみです。一般の化粧品にもナイアシンアミドが配合されている製品はありますが、これらの効果は保証されていません。製品を選ぶ際は、パッケージに「医薬部外品」の表示があるかを確認してみてください。

効果を実感するまでの期間と使い方のコツ

「塗ったのに効かない」と1週間でやめてしまう方がいますが、それは早すぎます。効果が実感できるまでの目安は以下の通りです。

  • テカリ改善:2〜4週間
  • シミ予防:4〜8週間
  • シワ改善:8〜12週間

最低でも2ヶ月は続けていただきたいところです。Kawadaらの臨床試験でも、シワの改善が確認されたのは8週間後でした。

使い方は至ってシンプルです。今使っている保湿剤を、ナイアシンアミド配合のものに替えるだけ。美容液を「足す」のではなく、保湿剤を「替える」。だからステップ数は変わりません。

朝晩の洗顔後に塗ればOKです。レチノールと違って光感受性がないので、朝使っても問題ありません。面倒くさがりな方にとって、「朝と夜で別の製品を使い分ける」必要がないのは大きなメリットではないでしょうか。

レチノールと併用するなら

すでにレチノールを使っている方へ。ナイアシンアミドとの併用は、むしろおすすめです。

ナイアシンアミドのバリア強化作用が、レチノールの刺激をやわらげるという報告があります。レチノールの効果を活かしつつ、副作用を軽減できる組み合わせとして注目されています。

併用の科学的根拠や実践ガイドについては、次回の記事で詳しく解説する予定です。

まとめ ── 「保湿剤を替える」から始めよう

ナイアシンアミドについて、もう一度おさらいしましょう。

  • ビタミンB3の一形態。体にもともと存在する安全な成分
  • 厚生労働省がシワ改善と美白の2つの効果を正式承認
  • シワ・シミ・テカリ・乾燥の4大悩みに1成分で対応
  • レチノールと違い低刺激で朝晩使える。初心者でも安心
  • 男性特有のインナードライ肌に理想的にマッチ

やるべきことはシンプルです。

今使っている保湿剤を、「ナイアシンアミド4〜5%配合」のものに替える。

それだけで大丈夫です。ステップは増えません。面倒くさくありません。臨床試験では4〜8週間で効果が確認されています。焦らず、毎日の習慣として続けてみてください。

おっさんでも、やれば変われます。まずは保湿剤を1本、替えるところから始めてみませんか。

次回予告:慣れてきたらレチノールとの併用で効果はさらに高まります。次回は科学的根拠に基づいた「レチノール×ナイアシンアミド」併用ガイドを解説予定です。また、具体的にどの製品を選べばいいか、おすすめのナイアシンアミド配合保湿剤レビューも近日公開予定です。

参考文献

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